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後悔(譲)

2017.07.14 *Fri
昔あの人が切なげな笑顔で言っていたことを思い出した。

自分が高校に上がる前のことだった。
あの人は、兄のことが好きだった。
兄が俺と同じように、先輩のことを好きなのも知っていた。
それでも、あの人は兄が好きな気持ちを押し殺して、兄や先輩にばれないように、一番近くにあり続けた。
そんなあの人が、俺にある日言ったのだ。

「譲はちゃんと、望美に言うんだよ」
「何をですか」
「わかってるくせに」
「さぁ」

何を、先輩に言えと言われたのか、俺はちゃんとわかっていたのにはぐらかした。
明らかに先輩と兄は両想いだった。
未だ、そういう関係になってはいないとはいえ。
時間の問題だろう。
俺には自分の気持ちをつげるなんてこと、できそうにもなかった。
だから、わかっていてはぐらかした。

「まぁ、それでもいいけどさ、言わないで、その恋が終わったら、もう救いようがないくらい辛いんだよ
後悔が、ずっとずっと残るんだ」

兄とは、ある意味、俺や先輩よりも長いつきあいの人だった。
あの人は、物心ついた時には、兄のことが好きで好きでたまらなかったという。
でも、気がついたら、気持ちを打ち明けることができなくなっていたという。
もう、この人のをことを、あの兄は、そういう風に見ることがないのを、幼いながらに悟ったという。
何が悪かったわけでもない。
タイミングとか、運とか、そういう物があわなかっただけなのだ。

「私は叶わないとわかっていても、言わなかったことを、ひどく後悔しているの」

中学にあがった頃から、兄はこの人に先輩とのことを相談していたらしい。
身を焼かれるような思いがしたに違いない。

「叶わなくても、関係が壊れたとしても、言えばよかった。
言えば、言えば私にもチャンスがあったかもしれない。
将臣の特別になれたかもしれない」

彼女の望むのとは違う形で、彼女は特別なのを知っている。
女性でありながらも、自分のことを何よりもわかってくれる。
半身のような特別な親友。
それはこの人の、大切な何かをごりごりと削り取りながら成り立っているというのに。

「兄さんは馬鹿だ」

本当に馬鹿だと思う。
こんなに思ってくれる人がいるのに、気がつきもしない。
残酷に無自覚に、優しく真綿で彼女の首を絞め続けている。

「悟られないようにしているもの」

悲しそうに笑うこの人は、幸せになるべき人なのに。

「でも、私はまだマシなの。
将臣を取られたの、望美にだから。
あの子なら、私、仕方ないと思うの。
幸せになってほしいって、心から思えるから」

そう言うこの人は、その言葉を本心から吐いたらしかった。

「でもね、まだ、あの二人はふわふわしてるから、譲は、私みたいにならないでね。
まだ、どうなるかわからないのだから、貴方はちゃんと言った方がいいわ。
将臣と望美がくっつくなら納得できるかもしれない。
でも、万が一、あの子が違う男の物になったら…
なんであんな奴!と思うような男の物になったら、悔しくて後悔して、死んでも死に切れないから」

この人の言うことはわからなくもない。
しかし、先輩が他の男とくっつくなんて、想像もできないことだった。

「手が届くうちに、伝えられることは伝えなさい。
私みたいにならないうちに」

そういってあの人は刹那く笑った。

俺は、この時代に来て、はじめてあの人の言っていた本当の意味を知った。
あの人の気持ちを知った。
身が焼けるようだった。
心が痛くて痛くてたまらない。
幸せになって欲しいと思う。
でも、自分が、本当は幸せにしたかった。
自分の物にしたかった。
隣にいるのは自分でありたかった。

でも、もう遅い。
そういう役回りに俺はない。
俺は、俺は今あの人と同じだ。
そして、あの人よりも立場が悪い。
あんな奴と、俺のほうが、先輩を幸せにできるのに…
言えばよかった。
言っていれば、もしかしたら…
そんな苦い後悔が、俺の胸の内にわだかまり続けている。


今の俺を予言したあの人は、あの後、自分の状況に耐えられなくなったのか儚くなってしまった。
今となっては、彼女の胸の内を知っているのは俺だけだ。
俺達は、ひどく似ていたのかもしれない。
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プロフィール

紅 遊羅(クレナイ ユーラ)

Author:紅 遊羅(クレナイ ユーラ)
趣味:ゲーム・読書・創作・散歩など
誕生日:七月二十日
年齢:大学生
所在:東京
性別:女

作品傾向:基本ファンタジー。正直現代物は苦手。


本とゲームがなければ生活できない、受験を控えた学生。

人外(擬人化、狐、鬼、爬虫類など)、志方あきこさん、声優さん(挙げるときりがないので自重します)をこよなく愛しています。




小心ものでありながら、最近なんだか大きくなっていて、反動が心配です。



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